城山三郎『「粗にして野だが卑ではない」石田禮助の生涯』 いや、ここしばらく覚えが無いほどの、実に気持ちの良い読書だった。
 「私の不徳のいたすところだと思いまするが、とにかくなんとなくそういうことになったという」。
 一番笑ったのがここ。現在の国のトップ達が毎日のように経験していそうだがそんな報告の仕方は口が裂けてもせんであろうということを、普段そんな物言いからは対極にいる石田が不本意な心の感想そのままに言ってしまったというところが、端的にこの人の人間の愛らしさを表していると思う。そういう所が好きなんだ!と思わず頬ずりしたくなる感じ。
石田禮助の生涯 「粗にして野だが卑ではない」 (文春文庫)